この記事を読むには、差動重力と潮汐力についての理解が必要です。
以前の潮汐力の記事を一度読んでみましょう。
1. ロッシュ限界[Roche limit]
宇宙にある天体同士が相互に潮汐力を働かせるとき、もし衛星自体の重力よりも惑星が作用する潮汐力が大きい場合はどうなるでしょうか?
このとき衛星は潮汐力によって両側に引き伸ばされて粉々に壊れてしまいます。
衛星が潮汐力によって壊されずに惑星に接近できる軌道半径をロッシュ限界と呼びます。
2. ロッシュ限界の導出
1) 前回の潮汐力の公式からロッシュ限界を理解してみましょう。まず、記号を以下のように定義します。
惑星の質量と半径 = M, R
衛星の半径と質量 = m, r
d = 二つの天体の間の距離2) 潮汐力が作用する力の大きさは次のようになります。

3) このとき惑星に接近する衛星の質量をmとすると、衛星にある単位質量の物体に作用する重力を求めると以下のように書けます。

4) ロッシュ限界は潮汐力>衛星の重力のときに求めればよいので、二つの式を活用すると次の結果が得られます。

5) このとき惑星と衛星は球と考えられます。惑星と衛星の体積を求めると以下のように書け、これを式に代入すると次の結果が得られます。


3. ロッシュ限界の解釈
では最後に求めた値を解釈してみましょう。どのような値が出たかよりも、値をどう解釈するかが重要です。
- 惑星の密度と半径が一定の場合、ロッシュ限界は衛星の密度に反比例する。
- 惑星の密度と衛星の密度が一定の場合、ロッシュ限界は惑星の半径に比例する。
- 惑星の半径と衛星の密度が一定の場合、ロッシュ限界は惑星の密度に比例する。ここで重要なことは、ロッシュ限界が衛星の半径、つまり衛星の大きさとは大きな関係がなく、衛星の密度にのみ反比例し、惑星の大きさと密度、すなわち惑星の質量に影響を受けるということです。
惑星の密度と大きさが大きければ広いロッシュ限界を持ちます。
衛星が惑星に近づけず、ロッシュ限界よりも近く接近すると、衛星は潮汐力によって粉々に壊れて小さな塊に分かれます。
4. 土星周囲を公転する衛星のロッシュ限界
ウィキペディアでロッシュ限界を調べると、太陽系の各惑星のロッシュ限界を見つけることができます。
今日はウィキペディアに示されている惑星の物理量を利用して、様々な惑星の中から土星周辺のロッシュ限界を推定し、土星の衛星が位置している場所がロッシュ限界に反していないかを見てみます。
まず、土星の物理量を見てみると以下の通りです。
土星の半径 60,267km
土星の密度 687.3kg/m^3
上記の公式から惑星は土星に決まっているため、土星周囲のロッシュ限界は衛星の硬さ、つまり密度にのみ依存します。土星を公転する衛星の密度推定値を利用してロッシュ限界を求めることができます。
惑星 | 衛星 | 公転軌道半径/ロッシュ限界 | |
剛体(固体) | 流体(気体、液体) | ||
土星 | パン | 142% | 70% |
アトラス | 156% | 78% | |
プロメテウス | 162% | 80% | |
パンドラ | 167% | 83% | |
エピメテウス | 200% | 99% | |
ヤヌス | 195% | 97% | |

上記の内容から土星の衛星が概ねロッシュ限界の外側に存在しているという事実が分かります。
もし衛星の密度が土星の密度よりも大きければ、衛星はロッシュ限界に達する前に土星と衝突するでしょう。
したがってロッシュ限界に達することはできません。
5. 結論
我々は差動重力を通じて潮力から惑星が衛星を破壊する範囲であるロッシュ限界まで見てきました。
惑星の周りに存在するリングの大部分はロッシュ限界内にあります。
土星のいくつかのリングはロッシュ限界外にある場合があり、これはロッシュ限界の内側を通過する際に壊れたか、原始惑星が形成されるときに衛星として合体することに失敗したものと思われます。
したがって、惑星周囲に存在するリングは捕獲されたか、元々存在していた衛星がロッシュ限界内に近づくことで壊れたものと考えることができます。
以下の土星のリングとリングの間に挟まれた土星の衛星を見ながら、惑星と衛星の絶え間ない引っ張り合いについて物理的な想像力を育んでほしいと思います。


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